経営の神様とノーベル賞受賞者の対談
2014年10月に発行された単行本「賢く生きるより 辛抱強いバカになれ」(朝日文庫)が、このほど文庫本として再発行された。
私が師と仰ぐ稲盛和夫氏と、その稲盛氏が設立した(財)稲盛財団が運営する「京都賞」を2010年に受賞され、後にノーベル賞を受賞された山中伸弥氏の対談をまとめた書籍だ。
タイトル(「生きるより 辛抱強いバカになれ」)は何やら攻撃的な題名がつけられているが、本編には特にそんな内容で占められているわけではない。
京セラを創業当初、セラミックの技術開発一手に担ってきた稲盛氏と、iPS細胞の研究で多大な功績を収めた山中氏の、お互いの経験から、物作り・組織論・人生論に至るまで幅広く語られている。
しなやかに生き延びる力「レジリエンス」
そんな中で一番印象に残ったのが後半に書かれている「レジリエンス」という言葉。
レジリエンスとは、「辛い出来事などに遭遇したときに しなやかに適合し生き延びていく力」だそう。
例えば東日本大震災の際に 家族などをなくし、立ち直れずに自殺してしまった方がいる一方、希望を失わず立ち上がって前向きに生きた人がいる。このときの人間の力がレジリエンス。
人間力と言ってもいいかも知れないが、本書の中では感謝の気持ちがレジリエンスに繋がってくると語られている。
稲盛氏も山中氏も歴史に残るような偉業を達成された方同士の対談で、幼少時代から多岐にわたって語られており、特にリーダー論など参考になることも多かった。