TRONの産みの親
先日行った「IoT Technology 2016 展示会」で基調講演されていた坂村健教授の著書「IoTとは何か」を読んだ。
坂村健教授と言えば、私が前職のSE時代に坂村氏の提唱した「TRON」のOS開発を行っており、以前から存じていたので、大変興味深く読ませていただいた。
30年も前からオープン化を提唱
TRONは、30年も前にオープンなOSを日本から世界へ!と、開発されてきたテクノロジー(OS)であるが、その後「インターネット」という完全にオープンなインフラが情報化社会の中心となってきた。
そしてIoTという言葉がひときわ脚光を浴びてきた今日でも、そのオープンであることの重要性を説いている。
IoTでも「哲学」が重要
本の中で最も印象的だったのが、技術の最先端をいくようなIoTの話でも「哲学」が重要だと述べられている点。
IoTも各社がそれぞれ独自の囲い込みで自社の機器しか接続できないようでは意味がない。インターネットのように誰でもが接続でき、そしてAPI(アクセスするための仕様)を公開し、異なったメーカー同士でも簡単に制御できることが肝要。
しかし、オープンにすると当然セキュリティとか、いわゆるガバナンスの問題が出てくる。
万が一故障が発生したときの責任の所在とかも曖昧になりがちだ。
要は運用ルールとかの決め事。それを決めるには「哲学」が必要だと。
日頃から人間学とか人生哲学的な勉強をいろいろとしているが、まさか技術の最先端であるIoTで哲学が語られるとは思ってもいなかった。
日本社会がニガテなベストエフォート
日本社会はとかく最初からガチガチにルールを決め、決められていないことはダメ、という社会だ。
一方、欧米は決められていないならとりあえずやってみよう。それで何か問題が出てきたら考えよう、という社会。
インターネットなんて まさにその考え、すなわちベストエフォートで成り立っている。
ベストエフォートとは、完璧ではない=品質を保証しないが、最大限の努力をする、ということ。
スピードが求められる時代、ベストエフォートで進めて、オープン化の最大のメリットである「みんなが作り上げていく」という発想が大切である。