筆者の取材力に敬服
今まで 盛和塾の機関誌 全156巻を 毎週1冊ずつ読んで感想をアップする、、という、通称「機関誌マラソン」を ほぼほぼ丸三年続けていた。。
この間、機関誌を読むのに必死で、それ以外の本は ほとんど読めず、、「積ん読」状態になっていた。
その機関誌マラソンが 8月末で完走(終了)し やっと溜め込んだ本を読めるようになった。。
で、今回読んだのが「起業の天才! ~江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男~」。
リクルートという会社、、ワタシの印象では「一定のスキルアップした社員が、脱サラして起業していく会社」というイメージがあった。
そういう意味では、他の大手企業とは違う、何か特異な印象を持っていた。
知り合いの経営者にも「リクルート出身」という人が少なからずいる。
本書の著者は、日経出身のジャーナリスト 大西康之氏。
読み終わって 著者紹介を見たら、過去に読んだことのある「稲盛和夫 最後の闘い」の著者でもあった。
そして、450ページ以上にもわたる分厚い本書の内容が具体的で、幅広くそして深い、、大西氏の取材力に敬服する。
第二電電創業前、稲盛氏とも関わりが。。
江副氏が数々の事業を展開していく中で、電電公社民営分社化の対抗馬として名乗りを上げた「第二電電」の創業にも絡んでいた。
第二電電と言えば、私が師と仰ぐ稲盛和夫氏が、ソニーの盛田昭夫氏などとともに創業したことは、稲盛氏の講話などで何度も聞いていたが、創業前の構想段階に江副氏も加わっていたことは、本書で初めて知った。
そして いざ起業する段になって稲盛氏が「江副くんは、まだ早いんと違うか」と言って、難色を示したという。
結局、江副氏(リクルート)は、大株主ではなく マイナーな出資に留まったという。。
「動機善なりや、私心なかりしか」
稲盛氏は、第二電電に乗り出す前、半年間にわたって毎日「動機善なりや、私心なかりしか」と自分に問うた。
そして「これは国民のために電話料金を安くする、その大義に一点の曇りもない。自分が目立とうとか儲けようとかいう私心も一切ない」と心に誓って 決断した。
日本航空の再生を見事にV字回復させたときも話されていたが、「動機が善で、世のため人のためにと起こした行動は、必ず成功するし、天をも味方してくれる」と。
そんな稲盛氏からみたら、江副さんの野心は それと真逆に映ったのかも知れない。
その後 政財界を巻き込んだリクルート事件に発展したことを鑑みると、このときの稲盛氏の人を見る目は間違っていなかったのだろう。
孤独。。
本書のタイトルにもあるように「起業の天才」と言われ、「情報」の価値をいち早く見いだして巨大企業リクルートを作り上げた江副氏だったが、、どこかに「孤独」という文字が見え隠れする。
天才肌だっただけに、その裏では孤独だったのかも知れない。
リクルート事件で失脚し、数年前に亡くなったことは知っていたが、最後亡くなり方が なんとも悲哀を感じずにはいられない。
まぁ大西氏がそういうニュアンスの書き方をしているからかも知れないが、、時代を切り開き 突っ走ってきた人生の幕切れとしては あまりにも寂しい。
稲盛氏は「成功もまた試練」と言っているが、、「足るを知る」「謙虚」「利他」などの心があれば、もう少し違った人生になっていたかも知れない。
一度は読んだ大西氏著「稲盛和夫 最後の闘い」を、もう一度読み返してみようと思う。