稲盛氏の経営手法を客観的視点から見る
本書は、2010年に経営破綻した日本航空(JAL)をV字回復させ、わずか3年足らずで再上場を果たした稲盛会長の経営手法を、側近として京セラから招聘された 大田嘉仁氏(当時 JALの専務執行役員)が一冊の本にまとめたものである。
盛和塾の塾長でもある稲盛氏による直接の講話等は、ご著書やDVD等で頻繁に目にするが、第三者目線で客観的に見たものは貴重である。
それが、間近で一部始終を見ていた側近の大田氏によるものであれば尚更だ。
大田氏にしか わかり得ない素顔も垣間見ることができる。
トップとしてのあるべき姿
そこには、トップとしてのあるべき姿が赤裸々に綴られている。
あの偉大な経営者 稲盛和夫氏が再生担当会長として乗り込んできたJALで、稲盛氏は経営者の意識改革の他に、現場を廻り末端の社員に声をかけ続けた。
現場社員は、どれだけ叱咤されるか戦々恐々としていたが、常に暖かい言葉をかけ「皆さん一人ひとりの行動が、JALを利用するお客様へ伝わります。私も老骨に鞭打って頑張るので、皆さんもぜひ頑張ってほしい。」と一人ひとりと握手しながら廻ったという。
そしてトップとして常に「謙虚にして奢らず」を実践している逸話には枚挙に暇がない。
当たり前のような簡単な行動に見えるが、あれだけの立場の人が 本当に謙虚に実に自然に行動されている。
リーダーという立場の人には、ぜひ読んで頂きたい一冊である。
「男ならもっとド真剣にやらんかよ!」
ちょうどこのJALの再生に携わっていた 2012年5月、軽井沢で盛和塾塾長例会が開催された。
その懇親会の席で、稲盛塾長が「俺が目の前で見せてるだろ。男ならもっとド真剣にやらんかよ!」と活を入れられたことを思い出した。